『THE Petal』 interview【Part2】
「花束の代わりにTHE Petalを」
ヴィジタンティーヌ誕生秘話【Part2】
ミシュラン三つ星シェフの江﨑 新太郎氏が代表取締役会長として、お客様に「おいしい」という喜びと共に「健康」をお届けするビジョンを掲げて2014年に創業した株式会社おいしいプラス。
創業以来フードテック事業(主に、お弁当事業)を展開してきたが、2025年に新しくスタートするのが新事業の『THE Petal』だ。「花束の代わりにTHE Petalを」をテーマに、低糖質でおいしい、贈り物として喜ばれるギフト用焼き菓子をオンラインで展開する。
Sano Minami Design Office(以下SMDO)では2018年に冷凍弁当事業のリーフレットデザインを担当したことを契機に、おいしいプラスと様々なコラボレーションを展開。今回は『THE Petal』のブランドデザインコンセプト策定から商品開発秘話まで様々なお話を、株式会社おいしいプラスの伊東社長(伊東修、代表取締役社長)、吉村部長(吉村健人、製造統括部 部長)にお話し頂く。【Part1こちら】
インタビュアー・執筆:Yuri Tozaki
「THE Petal」の実績ページはこちらからご覧ください。
https://sanominami.com/project/the-petal/
株式会社おいしいプラス/代表取締役社長
伊東 修
2002年:野村證券株式会社入社。全国同期3年連続営業成績トップ。
3年目にして全国7年次以下全社員中営業成績トップ(野村証券史上初)。
2006年:米モルガンスタンレー証券会社入社。機関投資家、上場会社、未上場会社等の法人営業に従事。
2008年:リーマンショック等未曾有の金融危機の中、ヴァイスプレジデント昇格。
2013年:株式会社クラウドファンディング創業。
2014年:株式会社おいしいプラス創業。
出身:神奈川県
趣味::四季報を読むこと
株式会社おいしいプラス/製造統括部部長
吉村 健人
2010年:株式会社ひらまつ入社。サンス・エ・サヴ―ルに配属。
料理からデザートまでの一通りを学ぶ。ここでの修業が自身の料理の原点となる。
2015年:ロイヤルホールディングス株式会社入社。
ロイヤルコントラクトサービス株式会社にて、伊勢丹新宿本店 イセタンダイニングに配属。
入社半年で副料理長、約1年で料理長となる。多種多様なジャンルの料理を学び、作り上げる。
2023年:株式会社おいしいプラス入社。
Sano Minami Desogn Office 代表/アートディレクター
佐野 みなみ
1983年11月03日生まれ。東京理科大学理学部化学科卒業 東京理科大学大学院理学研究科 化学専攻中退
その後、第一種特待生としてバンタンデザイン研究所グラフィックデザイン学科入学。
C.T.T.P (現 信藤三雄事務所) インターン在籍後2009年4月より2010年4月まで 合同会社OPERA (現 株式会社ヴィーナス・スプリング ) に在籍。グラフィックデザイナーとして勤務。
2010年4月より独立しSano Minami Design Officeを設立。
2023年から3年連続でグラフィックデザイン年鑑『MdNデザイナーズファイル』にて最前線で活躍しているトップクリエイター&次世代を担う若手デザイナー255組の1人として掲載されている。
チャレンジャー精神に溢れた環境で
より高みのデザインを目指す
− 佐野さんの方でお菓子のコンセプトなどを吉村さんに相談しながら作り上げていったということですが、吉村さんがプロダクトを作り上げる中で「大変だ」と思われたシーンはありましたか?
吉村部長:我々おいしいプラスの社の雰囲気もあると思いますが、チャレンジ精神が強く抵抗感なく挑戦できる環境なので、達成感の方が強いんですよ。
『THE Petal』の商品開発の初期は、様々な形の試作品を佐野さんに送りつけて、食べていただきながら味の感想をいただいていました。
ブランドのイメージと合うかなどの感想のやり取りも、お弁当事業とも並行してだったので手が回りきらない時もあったんですけど、楽しみながらやれました。
佐野:私がおいしいプラスさんのチャレンジ精神をまさに感じたのが、パッケージ制作のシーンで。
普通の企業さんのパッケージ制作は「予算をいかに抑えるか」が重要なので、紙も本当は贅沢なもの使いたいけど「もうちょっと安いのになりませんか?」と言われたりする。
だけど、おいしいプラスさんは逆なんですよね。予算を考えてこの辺りの紙でどうですか?と提案したら「いや、佐野さんがいいと思うもので提案してほしい」と言われて。
レザー調の紙とか、普段なかなか私たちも使えない紙を使わせていただいて。
大きな企業さんだとロットも多くなりがちなので、絶対使えないような紙も使わせていただいたりして、私たちも楽しみながらデザインをやらせていただけました。
そうした部分でもチャレンジ精神が伝わってきて、本当にプロダクトに妥協なくいいものができたのではないかと思いますね。
下:パッケージに使用する用紙の検証
下:SMDOが提案したパッケージデザインの色検証の一部
−双方でより良いものを、とお互いに意見交換した結果が花開いたということなんですね。
佐野:『THE Petal』を作る中で吉村さんが何度も何度も試作品を送ってくださって、フレーバーや味に関しても感想をぜひ教えてほしいとおっしゃるので、私も遠慮なしで色々と伝えたんですけど。
それでどんどん商品自体リッチになって、見た目もどんどん華やかになっていって。そのブラッシュアップ感が、この1年でパッケージもそうですし、中身もギフトに最適なものになったなと感じます。
− SMDOからおいしいプラスに出された提案で、印象に残ったものはありましたか?
吉村部長:一つ返したら、佐野さんの方からすごいスピードで倍返してきてくれる楽しみがありましたね。
遠慮して言ってくれない取引先もたくさんある中で、本当にこういうデザインでやりたい!という気持ちもまっすぐ伝わってきたので。
− 異様なレスポンスの速さが印象に残ってるんですね(笑)。
吉村部長:バンバン打ち返してきてくれるから、ちょっと大変でした(笑)。でも、その打てば響く感じがすごく楽しかったです。
伊東社長:SMDOは、佐野さんがいいと思ってないとダメだ、という姿勢がすごく特徴的だと思っていて。だから仕事としてやっている以上は、いいと思ってるものしか出てこないだろう、という信用がすごくあります。
そこに対して疑ったことはないし、いつでも最高のクオリティで出てくるのがSMDOの良いところだと思うんですよね。
佐野:ありがとうございます。
今までの7年間お仕事させていただいて、やっぱりおいしいプラスさん自体もとてもこだわりがあるので、例えば一つのパンフレットやリーフレットを作るのにも文言に結構修正が入るんですね。
でもそれはおいしいプラスさんがこだわって表現されることを、何度も推敲(すいこう)されているから出てくる修正なんですよ。
おいしいプラスさんにはまず、こだわりや信念というのがあるんですよね。なので、デザインに対しても「佐野さんが作るものを信じます」という姿勢で来てくれるので、そうした信頼感がひしひしと伝わってくるのが、デザイナーとしてはありがたいですね。
− SMDOとおいしいプラス、お互いのこだわりに対して信頼感があるということですね。
下:webデザインの検証の一部
パッケージのボックス形状から描き起こし
超こだわりのボックス形状
− 『THE Petal』の商品開発においてこだわった部分について教えてください。
吉村部長:一番は、やはり化学調味料・着色料・保存料・香料を使わないで宝石のようなツヤ感などを出すこと。
デザートにおいてきらびやかさを表現するためには、一般的には砂糖や添加物の粉を使いながらテクスチャを出すんです。
添加物を使わないと、安定しない部分もある。濃度が緩くなったり、時間をかけて解凍したら結局水みたいになっちゃったりとか。そういったところを解決しながら、いかにそういったものを扱わずに再現するか…
『THE Petal』で一番こだわったのはヴィジタンティーヌのイチゴ味です。
イチゴのペクチンという栄養素があるんですけど、科学的な面も考えながら煮詰め度合いや裏濾しの仕方を工夫し、透明性を出しながらいかにクリアな赤色の宝石のようなテクスチャーを出すか。
そういった部分を考えながらお菓子の形も考えて開発していくわけです。
自然で濃縮されたイチゴの香り、適度な酸味を残したフレーバーを出すことにはこだわったので、そこをぜひ味わって欲しいです。
− ありがとうございます。幾何学の形をお菓子で再現するプロダクト開発の苦労についてもお聞かせいただけますか?
吉村部長:生地の出し方…型に対して角やへこみなどのラインがしっかり出るように生地を調整するのが大変でしたね。
最初の生地では苦労したので、お花のイメージのふんわり感が出るように、軽い生地にしていこうと。
フィナンシェとヴィジタンティーヌって、実はほぼ同じお菓子で、製法が若干違うだけなんですよ。
ヴィジタンティーヌは、フィナンシェから卵白の使用法を変えたもの。フランスの伝統菓子ですが、ほぼほぼ同じ材料なんですよ。
なので、角のフォルムをしっかり出すためにフィナンシェよりもヴィジタンティーヌの生地の方がいいのではないかと思い、ヴィジタンティーヌを選びました。
佐野:『THE Petal』のビジュアルイメージでも伝えている幾何学感を形で表現してくださって、鋭利な角感も表現されている。私の提出したラフデザインから、とても素敵にブラッシュアップされたなと思いました。
下:商品に同梱するフレーバー紹介のリーフレット
下:ダンボールデザインの検証の一部
− 今回のブランドデザインを制作する中で、佐野さんが特にこだわった箇所を教えてください。
佐野:パッケージのボックス形状ですかね。
中身の構造をパッケージ屋さんと相談をしてイチから作成しました。
開けた時にゴテゴテとしてる箱形状は、私自身はテンションが下がってしまうタイプなんです。
パッケージ会社さんから試作が送られてきたものに対し、私の方でよりシンプル化した構造のアイデアをパッケージ会社の担当さんに伝え、CDディスクのような紙の土台を出っ張らせた爪の上に置くような構造になりました。
パッケージの外側だけじゃなく、中身の設計部分もシンプルな構造にするようこだわりましたね。
下:形状の検証
下:実際に商品化された形状
−パッケージの構造自体を考えられることは結構あるものなんですか?
佐野:他のデザイン事務所ではどうかわかりませんが、SMDOではたまにありますよ。プロダクトデザイン事務所ならやるかもしれませんね。
元々私は理系出身なので、自身で図面を引いたり展開図を描いてしまって、パッケージ屋さんに投げることも過去には数度ありました。
− おいしいプラスがSMDOに依頼して一番良かったと思ったところはどんなところですか?
吉村部長:私はレストラン上がりなので、料理の構想が外見やカトラリー、お皿などに引きずられる部分があります。なので、いくらお菓子が美味しく作れてもやっぱりギフトのラッピングだったり、開けた瞬間のシチュエーションやストーリーがないと何も響かない。
料理人の顔が見えると同時にお皿を作った人の顔も見えるイメージでしょうか。
なので、僕がSMDOに依頼して一番良かったなと思うのは、そういった感性に対して全て受け答えしてくれるところでした。
佐野さんのテーマに合わせて料理をストーリー化させていくっていうのは、かなり楽しかったです。
佐野:私はお菓子のことを何もわからずに幾何学模様のデザインを出したりするんですけど、それにすごく寄り添っていただき、楽しんで開発してくださったのかな、と思います。
お互いにやり取りして構築していく関係がとても心地良かったですね。
下:箔押しの検証
下:SMDOが提案したロゴデザインの一部
−『THE Petal』の今後の展望をお聞かせください。
伊東社長:おいしいプラスというストーリーの元で、次の商品や新しいお菓子を出していけたらいいかなと思います。
世の中を健康にするという我々の指針がありますが、『THE Petal』のヴィジタンティーヌは普通のフィナンシェと比べて糖質は約半分。これが人気のお菓子として世の中に広まることは、勝手に世の中が健康になっていくと信じています。
おいしいお菓子の一つの選択肢として、世の中に定着していきたいと思っています。
吉村部長:お弁当の方は糖尿病の人でも食べられるレベル感のものですが、お菓子の方も罪悪感なく食べられるものになればいいなと。
低糖質、低塩分というのはおいしいプラスのプロダクトとして定義づけているものなのですが、かつそれで、いつも食べてるものと同様かそれ以上においしいものじゃないと商品化しないと決めているんです。
そうした『THE Petal』に込めたこだわりを、やっぱり伝えたいところですね。
ただおいしいだけのものを作るのは簡単で「低糖質でおいしいものを作る」のはめちゃくちゃ難しい。なので、日々チャレンジです。人類がたどり着いていないものにたどり着きたい。その努力が楽しいんです、私たちは。
下:リーフレットデザインの検証の一部
下:ショッパーデザインの検証の一部
佐野:私も元々化学の研究をしていましたが、失敗続きで成果が出ないことが辛くて辞めた人間なんですよ。
でもデザインは、何度も検証しても楽しくて苦痛じゃない。吉村さんが何度もヴィジタンティーヌの試作をしてくださったように。
向いてる分野が料理かデザインかの違いだけで、吉村さんと私は似てるのかも。だから、フィーリングがマッチしてる部分があるのかもしれないと、お話を聞いて思いました。
吉村部長:あの形にたどり着くまでに焼いた数でいえば、約5000個ほどあります。一回の試作12個を焼くのに使う時間は2〜3時間。それを単純に5000 個分繰り返したとしたら、約3ヶ月くらいが試作にかかった時間です。
佐野:パッケージに使う色の検証も、ファイルの中にあるだけで組み合わせは100色近くあります。さらにその中から精査してセレクトした上で『THE Petal』側に提案させていただいている。
こうしたお互いのやり方を考えても、吉村さんと私の感性は近いものがあると思います。
− お互いが感性の部分で噛み合った結果、良いプロダクトの出力につながったのですね。
佐野:そうだと思います。
− 最後に、佐野さんから『THE Petal』がこんなプロダクトに育ってほしい、という希望があれば聞かせてください。
佐野:伊東社長がおっしゃったように、ギフトをあげるときに相手のことを本当に想っていたら、添加物だらけなものはあげられない。
ギフトっていうのは本当に相手のことを想ってあげるもので、それが身体にもいい、ちゃんとおいしいものだというのが本当のギフトの形だと思うんです。
「優しいギフト」というワードがすごくいいなと思ったんですけど、そうした『THE Petal』の理念が世の中にしっかり伝わればいいなと思っています。
見た目やパッケージももちろんこだわっているのですが、もらった人が心の底から幸せになれるギフトとして、広まってほしい。
伊東社長:贈った相手の健康を考えた上で、こだわり抜いて作られている。
ビジュアルも味も食感も形も、妥協なしで最高のものができたと自負していますし、おいしいプラスのこだわりが良い形で世の中に伝わったらいいなと思っています。
ー 貴重なお話を、ありがとうございました!
ブランドプロフィール
おいしいプラス / OISHII PLUS
「おいしさ」と「からだにやさしい」を両立する、
お菓子とごはんの新しいあり方を提案するフードブランド。
“やさしいのに、ちゃんとおいしい。”をコンセプトに、
日々の生活を彩るプロダクトを開発しています。
自然素材へのこだわりと、妥協のない味づくりで、
心まで満たされる食体験をお届けします。
公式サイト:https://shop.oishiiplus.com/
THE Petal webサイト
スイーツブランド 担当事例
ロゴ、パッケージBOX、ショッパー、リーフレットのアートディレクションとグラフィックデザイン
リブランディングにおけるクリエイティブ全般のクリエイティブディレクション、アートディレクション、グラフィックデザイン等